特定疾患療養管理料の算定要件とは?算定できないケース・点数・注意点を解説
特定疾患療養管理料の算定可否は、対象疾患の傷病名だけで判断するわけではありません。主病の設定をはじめ、治療計画に沿った療養管理の実施や診療録への記載、算定時期・回数など、複数の要件を確認する必要があります。
本記事では、特定疾患療養管理料を請求する際に確認したい5つの要件を整理したうえで、2026年度改定による変更点や算定ミスを防ぐためのポイントまで解説します。
特定疾患療養管理料の主な算定要件5つ
特定疾患療養管理料は、要件を満たさないまま請求すると査定につながる可能性もあります。まずは、特定疾患療養管理料の主な算定要件を5つ解説します。
①対象疾患を主病とする患者である
特定疾患療養管理料は、厚生労働大臣が定める対象疾患を「主病」とする患者が算定対象です。ここで言う主病とは、患者に対する全身的な医学管理を進めるうえで中心となる疾患を指します。2026年度時点における主な対象疾患は、以下のとおりです。
| 分類 | 対象疾患 |
|---|---|
| 循環器系 | ・虚血性心疾患 ・不整脈 ・心不全 ・脳血管疾患 ・一過性脳虚血発作および関連症候群 |
| 呼吸器系 | ・慢性気管支炎 ・慢性閉塞性肺疾患(COPD) ・肺気腫 ・喘息 ・喘息発作重積状態 ・気管支拡張症 |
| 消化器系 | ・胃潰瘍 ・十二指腸潰瘍 ・胃炎・十二指腸炎 ・慢性肝疾患 ・慢性ウイルス肝炎 ・アルコール性慢性膵炎 ・その他慢性膵炎 |
| 内分泌・代謝・遺伝性疾患 | ・甲状腺障害 ・処置後甲状腺機能低下症 ・スフィンゴリピド代謝障害 ・ムコ脂質症 ・遺伝性脂質代謝異常 ・リポジストロフィー ・ローノア・ベンソード腺脂肪腫症 ・思春期早発症 ・性染色体異常 |
| 感染症・腫瘍 | ・結核 ・悪性新生物 |
| その他 | アナフィラキシー ・ギラン・バレー症候群 |
対象疾患が副傷病にとどまり、別の疾患を中心に診療している場合は算定できません。実際に対象疾患について治療や療養上の管理をおこなっているかを確認し、診療録・レセプトからも主病がわかる状態にしておく必要があります。また、同一医療機関で複数の診療科を受診している場合は、主病に対する療養管理をおこなう診療科を明確にし、重複算定を防ぎましょう。
なお、2026年度診療報酬改定では、胃潰瘍・十二指腸潰瘍を主病とする患者へのNSAIDs投与について新たな取扱いが示されています。
②治療計画に基づいて療養上の管理をおこなっている
算定の前提となるのは、患者の病状や治療方針に応じた療養管理を、医師が治療計画に沿って実施している点です。診察や処方だけで完結するのではなく、患者の状態に応じて食事や運動、生活習慣への指導を取り入れながら、継続的に疾病を管理します。療養上の管理においては、毎回同じ内容を形式的に伝えるのではなく、病状や生活状況を踏まえた個別具体的な対応が重要です。
レセプトで特定疾患療養管理料を算定する際は、実際におこなった療養管理の内容と請求内容が一致しているか確認しましょう。
③管理内容の要点を診療録へ記載している
特定疾患療養管理料を算定した場合は、実際におこなった療養上の管理内容の要点を診療録へ記載する必要があります。「生活指導を実施」「継続管理」といった定型的な記載だけで済ませず、患者の状態や具体的な指導内容がわかる記録を残しましょう。たとえば、服薬状況や症状の変化、食事・運動への助言など、その患者に対して何を確認し、どのような管理をおこなったのかを記録します。
電子カルテのテンプレートを利用する場合も、画一的な記載にならないよう、患者ごとの疾患や状態に応じた情報を加える必要があります。請求時の記載漏れを防ぐには、特定疾患療養管理料を算定した診療日に必要な記録が残っているか、請求前に確認できる体制を整えておくと安心です。
④算定回数・算定時期の制限を満たす
特定疾患療養管理料は、療養上の管理をおこなっていても、算定できる時期と回数に制限があります。算定回数は、原則として患者1人につき月2回までで、同一月に3回以上算定しないよう、算定履歴を確認する必要があります。また、初診料を算定した日から1ヶ月を経過するまでの期間は算定できません。自院を退院した患者については、退院後1ヶ月以内が算定対象外です。
外来診療を再開する際は、退院日を基準に算定可能な時期を確認しましょう。初診日・退院日・過去の算定履歴をレセコンなどで確認し、「翌月になったから算定できる」と判断せず、患者ごとに算定可能な時期を見極めましょう。
⑤医療機関・診療形態などの要件を満たす
特定疾患療養管理料の対象となる医療機関は、クリニックと許可病床数200床未満の病院に限られます。入院中の患者は算定対象外となるため、外来・入院の区分や入退院日を確認して請求します。また、情報通信機器を用いた診療でも、施設基準の届出など所定の要件を満たせば算定可能です。
ただし、対面診療とは点数が異なるため、診療形態に応じた確認が必要です。同一医療機関で患者が複数の診療科を受診している場合は、主病の療養管理をおこなっている診療科での算定状況も確認しましょう。
2026年度診療報酬改定における注意点
2026年度診療報酬改定では、改定前から適用されている主病や療養管理、診療録への記載、算定回数などの要件に加えて、実務上確認すべき項目が追加されています。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍患者の取扱いを確認する
2026年度診療報酬改定においては、胃潰瘍または十二指腸潰瘍が主病であっても、一定のNSAIDsを投与している患者は特定疾患療養管理料の算定対象外です。NSAIDsとは「非ステロイド性抗炎症薬」のことで、痛みや炎症、発熱などを抑えるために用いられる薬剤です。算定時は傷病名だけで判断せず、対象患者へ投与されている薬剤まで確認する必要があります。院内処方に加え、把握できる範囲で他院から処方されている薬剤についても確認しましょう。また、2024年度診療報酬改定では、糖尿病・高血圧症・脂質異常症が特定疾患療養管理料の対象から外れています。
これらの疾患を主病として管理する場合は、特定疾患療養管理料ではなく、生活習慣病管理料の算定要件を確認しましょう。
対象疾患や除外条件は改定によって変わるため、以前から継続して算定している患者についても、最新のルールをもとに算定可否を見直す必要があります。2026年度の見直しを踏まえ、対象疾患だけでなく、投薬内容を含めて適切な療養管理がおこなわれているか確認する運用が重要です。
参考:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 7.外来医療の機能分化・強化等」
長期処方・リフィル処方箋への対応を院内掲示する
2026年度診療報酬改定では、28日以上の長期投薬またはリフィル処方箋の交付に対応できる旨を患者へ周知する要件が追加されています。医療機関では患者から見やすい場所へ掲示し、長期処方・リフィル処方箋に対応できる旨を知らせましょう。
ただし、患者から長期処方やリフィル処方箋を希望された場合に、一律で交付するわけではありません。患者の病状などを踏まえて医師が適切に判断します。院内掲示は診療録やレセプトだけでは確認できないため、請求担当者だけでなく院長・事務長なども掲示状況を把握しておく意識も重要です。改定時には算定項目だけでなく、施設基準・掲示物・院内運用まで含めたチェックリストを作成すると、対応漏れを防ぎやすくなります。
2026年度改定後も基本要件・併算定ルールを確認する
2026年度診療報酬改定への対応では、新設・変更された項目だけでなく、以前から定められている算定要件も引き続き確認する必要があります。対象疾患が主病となっているか、治療計画に基づいた療養管理をおこなっているか、管理内容が診療録へ記載されているかを改めて確認しましょう。
初診・退院後の算定制限や月2回までの上限など、算定時期・回数についても点検が必要です。また、特定疾患療養管理料は、ほかの医学管理料などとの併算定が制限される場合があります。同日・同月の算定履歴を確認し、重複して請求していないか注意してください。
改定後も告示・通知・疑義解釈などの最新情報を継続的に確認し、必要に応じて院内ルールやレセコン設定へ反映しましょう。
算定ミス・査定を防ぐための確認ポイント
ここでは、算定ミスや査定を防ぐために医療機関で取り組みたい確認ポイントを解説します。
主病・算定時期・算定回数を請求前に確認する
請求前には、対象疾患の傷病名が登録されているかだけでなく、その疾患を主病として実際に療養管理をおこなっているかどうかを確認します。あわせて、初診料を算定した日や自院の退院日から1ヶ月以内ではないか、同一患者について月3回以上算定していないかについても確認が必要です。レセコンや算定履歴を利用し、入院中の患者や施設区分などの要件を満たさない患者への算定がないか点検しましょう。
また、2026年度診療報酬改定後は、対象疾患や薬剤、院内掲示など、改定によって確認が必要となった項目も請求前のチェックに追加します。複数の条件をまとめて確認できるチェックリストを作成しておくと、担当者による確認内容のばらつきを防ぎやすくなります。
また、自院の診療報酬請求を客観的に見直したい場合は、外部サービスの活用も有効です。ソラストでは、診療報酬請求の最適化のため、機会損失と算定漏れ・誤りの両方の観点から調査・分析をおこなう「診療報酬請求精度調査」を提供しています。
診療録とレセプトの内容を照合する
特定疾患療養管理料を算定した診療日に、療養上の管理内容が診療録へ記載されているか確認しましょう。傷病名や算定日だけでなく、患者の状態や実際におこなった指導・管理内容まで、請求の根拠として説明できる状態にしておく必要があります。「生活指導」「継続管理」などの定型的な記載だけで済ませず、患者ごとの状態や指導内容を具体的に記録します。電子カルテのテンプレートは記載漏れの防止に役立つ一方、すべての患者で同じ内容にならないよう注意が必要です。
医療事務担当者だけでは算定可否を判断できない場合は、請求を確定する前に医師へ確認できるフローを整えておきましょう。
併算定できない管理料がないか確認する
特定疾患療養管理料は、ほかの医学管理料や在宅療養指導管理料などと併算定できない場合があります。同一患者の同日・同月の算定履歴を確認し、重複している管理料がないか点検しましょう。併算定の可否や条件は管理料によって異なるため、「別の管理料だから算定できる」と自己判断するのは避ける必要があります。
また、レセコンでエラーが表示されない組み合わせでも、必ず算定できるとは限りません。最新の診療報酬点数表や留意事項通知などを確認し、算定可否を判断します。診療報酬改定によって併算定ルールが変更される可能性もあるため、改定時には院内の算定ルールやチェックリストも更新しましょう。
レセコン任せにせず算定ルールを院内で共有する
レセコンは診療報酬の算定・請求を支援するシステムであり、特定疾患療養管理料に関するすべての要件を自動で判定できるわけではありません。対象疾患や主病、初診日・退院日、算定回数、薬剤、併算定など、人による判断が必要な項目を整理しておきましょう。医師と医療事務担当者で算定ルールの認識が異なると、実際の診療内容と請求内容に不一致が生じる可能性があります。
診療報酬改定後はレセコンのマスタや設定だけでなく、院内マニュアルや医師の入力方法まで見直す必要があります。疑義が生じた際の確認先もあらかじめ決め、担当者が変わっても同じ基準で診療報酬を算定できる体制を整えましょう。
自院の返戻・査定原因を次回請求に反映する
特定疾患療養管理料が返戻・査定となった場合は、修正や再請求だけで終わらせず、発生した原因まで確認しましょう。レセプト査定の原因や返戻との違いについては、以下の記事で詳しく解説しています。

対象疾患や主病登録、診療録への記載、算定日、算定回数、薬剤、併算定などに分けて原因を整理すると、改善すべき箇所を把握しやすくなります。同じ医師・診療科・算定項目で繰り返し発生していないか、件数や傾向を定期的に確認するのも重要です。原因に応じてレセコン設定や傷病名の登録方法、診療録の記載方法、院内マニュアルなどを見直し、改善内容を次回の請求前チェックへ反映します。
院内だけで算定ルールの確認や請求業務の改善を継続するのが難しい場合は、診療報酬算定ナレッジアプリ「solabell」や、リモート医事サービス「iisy」もご活用ください。
この記事の著者
株式会社ソラストは、1965年に医療事務の教育機関として創業した、
医療事務の教育と、医療機関向けの医事業務受託・人材サービスを手がける会社です。
(グループ社員約30,000人)
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